王子様なんているわけない!

「ちょ、ち、近いって!」
私が焦ってると、ゆっくりと那智は離れた。
「んー、熱はないかー。無理しないようにね?俺、結南のことが心配だからさ」
「ありがとう。でも、私は元気だから!メンバー表もかけたし、そろそろ帰ろうか!」
私は、赤くなった顔を隠すようにして荷物をまとめた。最近、那智の天然に磨きかかってずっとドキドキしてる。こんなんで、合宿耐えれるのかな、私。
「結南ー?帰ろう。」
荷物をまとめ終わり、ドアの前で待つ那智の声で我に返った。
「うん!ごめん、ぼーっとしてたわ!那智、帰ろうか。」




いつもの帰り道。
1つだけ、違うこと。それは、横に那智がいること。今まで、一緒に帰ることもなかったし人前で並ぶこともなかったから気が付かなかった。私よりも身長が高くて。意外と筋肉もあって。改めて、那智が男であることに気付かされた。
「あっ、俺こっちの道だから。ほんとは送りたいけど、寄るとこあるから帰るね。」
那智の声で我に返った。
「う、うん!わかった!付きあわせて悪かったね。助かったよ、ありがとう。」
「いいよ、俺が結南といたかったんだから。それじゃ、気をつけてね」
「ありがとう。また、明日ね!」
私は、那智の後ろ姿を見送り自分の家へと足を向けた。やっとこれで、休める。早く、帰ろっと。



このあと、悪魔が待っているなんて知らずに。