…こういう時、亡くなられたお母さまだったら何ておっしゃるかしら?
「…あの、姫様?」
侍女が不安そうに顔を覗き込む。
「今日の晩餐は…、出席なされますか?」
「…今日は、どのドレスを着ればいいかしら?」
私がそう言ったのを侍女は出席ととったのか、嬉しそうにドレスを並べ始めた。
淡いピンク、春らしいオレンジ、裾がふわりと広がった可愛らしいものから、タイトなナイトドレスまである。
「…ねぇ、赤いものはないの?」
私はわざとここに無いドレスを言った。
「赤ですか?…えぇっと…、ここには無いですが用意しましょうか?」
赤いドレスはこの前着たから、きっと違うところにしまわれているんだわ。
「…えぇ。お願い」
「かしこまりました!」
侍女は可愛らしくそう言うと、部屋を出ていった。

