「今、世界は暗雲のなかにあります。あちらこちらで戦争が起きているのです。この国は陛下が守ってくださっているのでさほど大きな変化はございませんが、隣国では日々銃弾が飛び交い、何十万にも上る民が死んでいるのです」

それは私も十分わかっている。

この国はお父様の力でまだ戦争に巻き込まれてはいない。

だけど、もう時間の問題だった。

「この国の領土を狙う国は多々あります。このウェルナンド国にも、そのような国々の間者が入り込んでいるかもしれません。姫様はこの国の王族であり、たった一人の王位継承者なのですぞ。もし姫様に何かあったらどうされますか!爺は死んでも死に切れません!」

爺やはそう言うと、よよよ、と泣きだした。