廻る時の中で



“クスッ”

貴方の笑う声が聞こえた。

あぁ、やっぱり!

笑れちゃったわ。

泣きたくなる。

「ローゼ姫、顔を上げて下さい」

そんなことできないっ!

だって、きっと顔が真っ赤。

目も涙でうるんでる。

私は首を横に振った。

すると貴方は困ったように笑う。

「姫がおかしくて笑ったのではありませんよ、むしろ逆です。可愛らしいと思ったのです」

「えっ?」

思わず振り向く私。

「機嫌を損ねてしまったのなら謝ります。すみません」

貴方はそう言って私の左手をとり、自分の膝を折って手に軽く口付けた。

この世界じゃなんてことない挨拶の一つなのに、どきどきしてしまう。

いつのまにか涙も乾いていた。