廻る時の中で



「おや?あなたはいつかの姫君では?」

気を落している私に、誰かが声をかけた。

どきん、と鼓動が跳ね上がる。

だって、私がずっと待っていた愛しい声だったんだもの。

あの時一度しか聞けなかったけど、決して忘れていない。

聞き間違えたりしない。

早く貴方の顔を見たいけど、緊張して振り向けない。

矛盾している。

「姫?」

もう一度、貴方の声がした。

高鳴る胸を隠すかのように胸の前で手を組み、私はゆっくりと振り向いた。

そこには微笑む貴方がいました。