鴨田くんと宮田さん

振り返るのが怖すぎる。ドキドキしてきた。
私の後ろに誰かが立っていることは間違いない。でも怖くてどうしても振り返れない。

「お疲れ様です。何か用ですか?」
「……ちょっと。宮田さんに用があるんだけど、いい」
「良いですよ」
「どうも」

えっ、腕を掴まれたと思うとグイグイと連れていかれる。嫌だ、見られてるし!
顔が赤くなるのがわかる。

「困ります。仕事中なんで」
「………」
「あっ」

階段の踊り場。ここに来る人はほとんどいないだろう。つまり私には逃げ道がないということだ。
絶体絶命。
そんな言葉が脳裏に浮かんだ。

「宮田さん」
「ごめんなさい。私、付き合えません」
「…………」