「いらっしゃい」


静かな鈴の音とともに優しそうな声が聞こえた。


声のした方へ顔を向けると白い髭を生やした優しそうなお爺さんが木製のレジの中で木製の椅子に座っていた。


右手には小説を、左手には眼鏡を持っている。


このお爺さんが店主だろう。


「こんにちは。ここはどんなお店なんですか?」


「そうさね…ここは、本当に欲しいものが見つかる店、かね」


優しい笑顔であたしの質問に答えてくれた店主の言葉は不思議なものだった。


「本当に欲しいもの、か…」


背後でそんな呟きが聞こえ振り向くとマスターが難しそうな顔をしていたので、話しかけるのをやめた。


こういうときに話しかけると大抵変なことしか言わないから対応するのも面倒なのだ。


「少し見て回っても良いですか?」


一応尋ねると、あの優しい笑顔で店主は頷いてくれた。


それを確認して、未だ難しそうな顔をしているマスターは放置でゆっくりと店の奥に進む。


商品はどれも動物をモチーフにしたもののようで、どの商品にもハート型の紅い宝石があしらわれていた。


鹿は脚の付け根辺り。


招き猫は招いている脚の肉球。


熊は胸の丁度真ん中に。


兎は大事そうに腕に抱えている。


そしてそのどれもがとても幸せそう。


親子でセットだったり、夫婦でセットだったり、一人きりだったり。


様々あるのに何故かどれもが幸せそうなのだ。


「なんでこんなに幸せそうな顔なんだろう…」


そう思わず呟いていた。


「あ…」


不思議に思いながら見て回っていると、ある棚にあたしの目が釘付けになった。