「雑貨屋さんだと思う」


……だと思うってなんだ。


まぁマスターの目に間違いはないしな…。


「別にいーよ」


マスターは驚く程良い目をしている。


人を見る目、店の良し悪し、相手の気持ちなど、マスターが良いと言ったもので悪かったことは一度もない。


「やった!じゃあ早く行こっ!」


満面の笑みであたしの手を引いていくマスターに小さく苦笑する。


こういう無邪気なところがあるからマスターは憎めない。


良い人だと、優しい人だと、わかってしまうから。


わかっているから。


あたしが本当に嫌がることはしない人だから。


「カグヤ、ここだよ」


そんなことを思っている間に目的地に着いたようだ。


目前にはこじんまりとした暖かみのある木造の店。


「なんか優しそうな店でしょ」


「あぁ…良いところだ…」


雰囲気でもうわかる。


店主の人の良さが滲み出ている店だ。


一柱一柱丁寧に作られた家のような店だ。


「″古薔薇″…」


古薔薇でアンティークローズ…。


店主の好きな薔薇なのだろうか…。


「とりあえず入ってみよ?」


「だな」


扉に手をかけているマスターの言葉に頷いて店内へと足を進める。