「-―で？」
「はい？」
あれから秋人家に連れて来られた私は、何故か正座をさせられていた。
というかなんか怒ってない？ 何故？ ｗｈｙ？
「さっき晴がオレに言ったこと。どういうつもり？」
「へ？ あ…いや、それは…」
「本気で言ってんの？」
「言ってません。秋人はフサフサのぼうぼうです」
「……は？」
「え？」
え？
ハゲって言ったことを怒ってたんじゃないんですか…？
「ハァ…」
「う…、す、すいません…」
「うん、バカもここまでくると重症だね」
うるさいやーい！！
ほっとけ、けっ。
「じゃなくてその後」
「後？」
「ハァ…、"大ッ嫌い"って言ったの…覚えてないの？」
「うん」
「………」
「わー！ 嘘うそ、嘘だって！ 覚えてます、バッチリ覚えてます！」
はい、確かにそう言いました。
だってさ、信じてた彼氏に浮気されたんですよ？
そんで「あ、居たんだ」的な目で見られたんですよ？
というか！
何で私が秋人にお説教されなくちゃいけないんだ！
私が怒る方じゃないか。
「でも…」
「でも…なに？」
「秋人が浮気なんかするからっ！」
「……はっ？」
「とぼけないでよ。私、アンタがさっきの知らない女と抱き合ってたの見たんだから！」
「…！」
「秋人に怒られる筋合いなんか…」
「アイツ男だけど？」
「………はっ？」
なんですとー？！
「へ？ 男…？」
「そ、３組のたつき。佐助のダチの」
「う、嘘だ…。そんなオチ知らない…」
「何なら今から連れてきて脱がしてみようか？ ちゃんと付いてるよ。男のア…」
「やめい！ 言うな！ ハゲポンタン！」
何だよそれ…。
えっ、もしかして私の隣の住人はそんな人がずっと住んでたってことですか？
「いや、今度の学校祭で女装コンテストがあるからってだけで、そんな趣味はないよ」
「あ、そう」
「そのコンテスト結構レベル高くてさ。色々練習してたみたいよ」
「……抱き合ってたのは…」
「そういうこと。まぁオレ的には男に抱きつかれるよりは、目の前に居るような可愛い子に抱き付かれる方が嬉しいけど」
「……」
「親御さん今日も遅いんでしょ？ じゃあ今日は泊まれば良いじゃん」
「……」
「異義は？」
「ありません…」
あぁ…なんかショックの方が大きすぎて…。
しかもまんまと秋人のペースに載せられてるし。
もう考えるの面倒くさくなってきた。
今考えても全てから回りな気がするし…。
「晴」
「うぅ～…」
「ほらほら、泣かない」
目の前の男はしてやったり顔でにやけてるし。
「おいで？」って両手広げて首傾げないでよ…。
ムカつきますから。
「そういえば今日、散々な目にあったんだって？」
「…誰からよ」
「さぁね」
朝からお気に入りの目覚まし時計壊すわ、卵焼き焦がすわ、部活でも足引っ張ってジャンケンに負けて頭から３回すっ転んで猫に喧嘩吹っ掛けられたその上肝心の記録用紙ボロボロにしちゃったけどさ。
秋人が男と抱き合ってたの見て見事に勘違いしちゃったけどさ。
最高に付いてない日だったけどさ…。
「慰めてあげようか？」
「変態…」
終わりよければ全て良しだ、コンニャロー！！
BAD DAY<了>
(あ、ちなみにコレ落ちてたよ)
(あっ！私の財布！)
.
