夏のわすれもの

しかし、母は私の異変に気づいていたのに、何も言わなかった。


「どうしたの?」

も、

「何があったの?」

も、本当に何も言わなくて。


「…無理だけはしないでね」


心底心配そうな顔をして、私にぽつん、とその言葉を残した。


「うん」


適当に返事をして、「布団を敷く」と言ってその場から逃げた。



あの場にいたくなかった。



空気だけが無駄に重くて、息苦しい。



…確かに、ただの1度も実家に連絡をよこさなかったのは悪いと思ってる。



両親の意見を振り切って、無理に東京の大学に出たのも悪いと思ってる。




就職したのに、両親に何も言わなかったことも悪いと思ってる。



でも、母が言いたいのはきっとそれじゃないんだろう。










それだけは、確かに、わかった。