夏のわすれもの

私は、その言葉を聴いた瞬間ふふっと笑ってしまった。


玄関に入り、靴を脱ぐ。


すん、と匂いを嗅ぐと、昔と何も変わりない匂い。


懐かしい木の匂い…いや、土?花?いや違う。なんだろう、この匂いは。


とにもかくにも、私はこの匂いが大好きだ。


「昔は、ここ全然田舎じゃないって思ってた。でも、やっぱり田舎だよね、ここ」


私は唐突にぽつん、と呟いた。


母が、目を見張って私を見る。


「…あんた、無理してない?大丈夫?」


母は、私の全てを見抜いてしまうから恐ろしい。


私は頬を緩めて、「少しね」と言った。


母がひどく心配そうな顔をした。