「………さん…………川嶋さん?」


私の名前を呼ぶ、どこかで聞いたことのある穏やかな声に吸い寄せられるように瞳をあければ、そこは真っ白い天井と、私の顔を心配そうに覗き込む、白衣姿の悟さん。


「………ここ……は?」

「病院だよ。川嶋さん、全身ずぶ濡れで女子トイレに倒れてたんだ」

「………病院、ですか」

悟さんに支えられて、ボーッとする頭で起き上がると、医薬品の香りがする真っ白のベットの上で、左腕にはチューブで固定された点滴が一定のリズムを刻んでいる。

「大丈夫?一体、何があったの?
雄大が急患で、ずぶ濡れのキミを担いで現れたときは本当に驚いたよ」

「………雄大が?……っ、そうだ……テスト……悟さん!わたし、行かないと……」

「え?行くってどこに……」

「選抜模試っ、受けないと……、雄大と一緒に居られないんですっ……!」

「川嶋さん落ち着いて。今日が何日か分かる?キミは高熱で3日間眠ってたんだよ」

「……え?」

黒縁眼鏡の奥の瞳を細め、困ったような表情の悟さんは、ベットを出ようとする私の身体を押さえてそんな驚きの発言をした。