「・・・であるからしまして、生徒諸君のみなさんは学生の本文である学業に専念し・・・」
校長の長い演説が意識の遠くの方で聞こえる。
入学式といっても中高一貫校なのであまり新鮮味は無いようだ。
決まった友達とふざけあっている生徒が多い。
居場所無さすぎつらい。
「あれ、君見ない顔だね」
声をかけてきたのはまたもや茶髪の男。本当に染色率の高いことで。
「ああ、外部なんだ。」
「そっかー、じゃ大変だね。俺は金剛雫、君は?」
決まり文句のように金剛は言った。
会う人会う人言う言葉。編入てそんな大変なのかよ?
「雨宮です」
「雨宮か、よろしく。」
金剛と言った男は人懐っこい笑みを浮かべた。それに適当に返しておく。
「編入て珍しいの?」
「いや、結構いるよ。今年は10人くらいかな。俺は内部だけど。」
微妙に多いなそれ。
「金剛は若山先輩て知っ」
てるか?
言い終わる前に俺の声はかきけされた。
この体育館中に響き渡る黄色い悲鳴によって。
「なあ、金剛・・・これなに?」
金剛は苦笑しながら壇上を示した。そこのは数人の生徒たちの姿があって・・・。
「若山先輩?」
ヘラヘラと笑いながら生徒たちに手を振っているのはあの若山先輩だ。
俺が昨日この学園に来たときに案内してくれたあの先輩だ。
そして回りの生徒たちはなぜこんなに騒いでいる?
「なにこれ?」
この状況に編入生であろう数人の生徒たちは動揺していることが分かる。
うん、なにこれ。
金剛の方を見るとニヤリと笑い返された。
「これが、ここの異常性の1つ。生徒会にいじょうなまでも人気があり、例にももれず、ゼツダイな権力を持っている。」
一段と回りの悲鳴は大きくなり、壇上の一人がマイクの前に立った。
生徒会長だろうか。
「静粛に」
りん、とした声が響き渡る。
その声の主は眼鏡で黒髪の美形が壇上の一番端でマイクを握っていた。
その鶴の一声、しん、と体育館の中は静まり返る。
一息ついて今度は壇上の真ん中の男が口を開いた。
「新入生のみなさん、ご入学おめでとう、私が生徒会長の東雲統だ。簡単に、生徒会の紹介をさせて頂く」
すげぇ、ええ声。イケメンは声も良いのか。うらやま。
生徒会長の東雲はちらりと壇上のメンバーに目配せをする。
「副会長の桜沢瑛流」
さっきの黒髪眼鏡が頭を下げる。
あれが副会長か、じゃあ若山先輩て何なんだろう。
次々と役員の名前が紹介されるが、俺は興味もないので右から左だ。
「会計総務、若山光一」
若山先輩が頭を下げてからへらり、と笑う。
若山先輩は会計の一番トップかなるほど。
顔と名前を覚えられたのは、今のところ若山先輩と同室者の那珂さん、そして同じクラスらしき男、金剛か。
あとは数十分足らずで名前どころか顔も忘れちゃいそう。ああ副会長は眼鏡だから分かるか。
まあ、生徒会とか関係ないし。
覚えた所でだ。
「それではこれから新入生歓迎会を始めたいと思います。」
その言葉に体育館中にまた悲鳴が上がった。
「歓迎会?」
それにも金剛は苦笑して答えてくれた。
「景品は『生徒会』だよ。」
は?