「じゃあ、戻ろうか」




藤田君がそう言って私たちに背を向けて歩き出す。




それに続いて私も歩き出そうとしたとき。




「さっきの、誰にも言わないでほしい」




藤田君に聞こえないようにするためか、耳元で滝本くんがそう呟く。




そんな滝本くんの行動に、やっと熱の冷めた顔が再び熱くなる。




返事をすることができずに何回もうなずくと、滝本くんは私の横を通り過ぎて藤田くんのもとへと歩いて行ってしまった。




な、な、な、なんか……刺激的な、時間でした。




教室に戻った後もどうしても意識は滝本くんの方にいってしまい、だけど滝本くんの方は見ることができず。




「佐原、どうかしたのか?」




不自然に滝本くんから顔をそむける私に先生がそう聞いてきたけど、




「な、なんでもないです……」




と答えることしか私にはできなかった。