「ちょ、離してっ!」
「え~っ、嫌だ」
「はあっ!?」
背中をバンバンと叩くが、ビクともしないその背中。
「ちょっと!誰かに見られたらどうするんですかっ」
「だいじょーぶっ♪」
「なにがですか!」
どれだけ叩いても、痛いくらい抱きしめる腕に力を入れられるだけ。
「風さんっ……!」
「っ!///」
そう彼の名前を呼んだ瞬間、彼の腕の力が弱まり、あたしはすぐに彼から離れる。
「あーっ、エラかったぁ」
胸のドキドキと息の苦しさになんとか解放されたあたしは、息を整えた。
「本当、いきなりなんなんですかっ……」
そう言いながら彼を見ると、
「…………。」
彼は口元を腕で隠しながら、そっぽを向いていた。
その顔は何故か、赤く染まっていて。
「えっ……」
それを見せられたあたしは、驚きのあまり固まったように動かなくなってしまった。


