「「あっ……」」
二人の声が見事に重なる。
「うわっ、どうしよー」
焦りながらガラスに手を伸ばした時、
「ちょ、危ないって!」
さっきまでキッチンの入り口に立っていた彼の手が、あたしの手を掴んだ。
「……ったく、これ割れてるんだから。手、切ったらどうすんだよ」
はぁー、と呆れたようにため息を吐く彼。
「……大丈夫だよ、これくらい」
「いーや、まだ中学生だろ。危なすぎる」
「中学生関係ないしっ!」
子供に見られているのが気に入らなくて、バッと顔を上げて彼の方を向いたら。
「っ!」
バチッと合った視線。
近い顔。
不意打ち過ぎて、ドキッとしてしまった。
だから、すぐに視線を逸らす。
「どしたー?」
彼は不思議そうにそう言って、あたしの顔を覗こうとする。
それも避けながら、つい出てしまった言葉。
「な、名前っ!」
「は?」
「名前、なんて言うんです、か……」


