脱☆年下系男子<番外編Ⅰ>







 そうこうしている内に、座敷に着いた。


「ははっ、いいじゃんそんな母親。俺にとったら羨ましいよ」


「風さんのお母さんは、どんな人なんですか?」


「……さあ?」


 話の流れで聞いた質問。

 風さんからの返答は、意味の分からないものだった。


「さあ?って、どういうこと……」


「だって俺、母親知らねぇもん」


「は……?」


 風さんは笑いながら入り口に置いてあったほうきを手にする。

 あたしは、そんな風さんを見つめていた。


 あまりに自然と出た言葉。

 母親を知らない……?


 自然すぎて聞き流しそうになった、重い言葉だった。



「え、そうなんですか?」


「うん、病気で亡くなった。物心ついた時にはもう、父親と二人だった」


「へ、へえ……」


 風さんには何ともないことなのだろう。

 だから、普通の会話として話せるんだ。


 だけど、ちょっと悪いことしてしまったかなと思ってしまう。

 あたしだけが勝手に気にしてしまって、上手く返事が出来なかった。


 こういう時、どうしたらいいか分かんないよ……



「そんな顔すんなって。俺は別に平気だし」


 戸惑っているあたしを見た風さんは、あたしの頭をポンポンッと優しく叩いた。