女子高校生の悩み。
真冬のスカートでタイツが駄目。
そんな学校だからこそすごく、とても寒くてとってもいや。
私だけかもしれないけどさ。
マフラーに顔をうずめながら友達とコンビニから出た。
「ホント好きだねそのガム。」
学校の帰り道友達に指差して言われた。
友達の指差す方向には私の右手。
右手で握っているのは甘いミントガムのパッケージ。
「なんか飽きないんだよねぇー。」
そんなんじゃない。
特別好きなわけでもなかった。
それでも私は常に噛んでいる。
異常なくらいに 。
このガムをきっかけに出会ったある人のことを只忘れたくないその一心で。


「大丈夫ですか?」
何処だっけ、ここ。
「立てますか?」
私はただ顔を横に振った。
見知らぬ道端で見知らぬ男性が。
「何処ですかここ。」
腰が痛い。
体が冷えきっている。
どうしてこんなところに?
記憶がフラッシュバックした。
男性が立ち上がるのを手伝おうとしてか手を差し伸べてくれていたのだけれど。
私はその手を思いっきりはらった。
中学3年生。秋。もう冬と言ってもいいかもしれない。
塾帰り。
どうしたの?
後ろから腕を掴まれて。
それで?
男の人が二人。
その後は?
路地裏に連れて行かれて。
それで?
「いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」
「!?」
やめて思い出したくもない!
腰の痛みはそのせいか。
そしてそのまま寝ていたのか。
そして見られてしまった。

助けてくれるかもしれない。

「来ないでぇ!言いたくない!嫌だ!気持ち悪い!」

薄暗い路地裏。
まだ明け方だったと思う。
繁華街の明け方は異常な静けさで。
私の叫び声だけが只響いて反響してきた。

私は数歩歩いただけで腰の激痛と幻聴に襲われ頭を抱え込んでうずくまってしまった。
あの男性から逃げようと、離れようとしたつもりだったのだけれど男性はすぐ追いついてしまった。
当たり前だ。数歩しか歩いてないのだから。
それでもその時の私にとってその数歩は1キロくらいあったようにも思えた。