『あ、急いでるんで』


一刻もこの場を離れようと嘘をついた。


この時間、この歳。

補導される時間なんてものじゃない。


言ってしまえば真夜中だ。



この人達がわざわざそんなことするとは思わないけど。


とにかく、もし通報されたりなんかして家に連絡がいくのなんてものは御免だ。




それに男の瞳に、何もかも見透かされてそうで恐かった。



何か言いたそうだったけど、男が口を開く前に私は顔を逸らす。




『ぶつかってごめんなさい』

「えっ、ちょ!」


もう一度謝って、隣の男が引き止めるような声がしたけどそれは無視して、そのまま俯きながら足を進めた。





なんか、あの男は嫌。


何も知らないくせに、他人の領域にまで入ってきそうな瞳。



私の嫌いな瞳。