突然のその声は勿論あたしのものではなくて。
「…えっ、」
声の主である彼はこっちに向かってくる。
「…なんで泣いてるんだ?」
は?あたし?
「っ、あ、?」
雨のせいでお互いに顔はあまりわからない。
泣いてるの?あたし。
「…別に、泣いてないです…」
「そっかー。お前名前はー?」
なんで泣いてるんだ?なんてこと聞いておきながらも彼の声のトーンは何一つ変わらず。呑気そうな表情も想像できる。
てか、この人馴れ馴れし過ぎない?
そう思いつつも無視はよくないと思い答える。
「紗輝ですけど…」
「…」
え、無視?
