君がくれた世界

――コンコン
「……お父さん、起きてる……?」
「……」
返事はない。
「入るよ……?」
部屋のドアを開けるとコーヒーの匂いが漂ってきた。
お父さんは新聞を読んでいた。
その前のテーブルにはコーヒー。
 
「新聞……、下で読まないの……?」
「……」
お父さんも顔をあげようとはしてくれない。
「お父さん!」
「……母さんはいるのか……?」
しばらくの沈黙の後、ようやくお父さんは口を開いてくれた。
「い、いるよ。和室でテレビ見てる」
「そうか」
やっぱり、避けてるんだ。
いない。って言っておけば、リビングにいってくれたかな。
「お父さんも、お母さんを避けてるの…? 」
「……」
無言の肯定。かな。
「舛里、お父さん今、新聞読んでるから、出て行ってくれないか……?」
お父さんは参った、というように笑いかけながら私に言った。
「さっきの質問、答えてよ」
笑いかけた、というよりは、はぐらかした、の方が正確だったかもしれない。
「出て行きなさい」
笑っていない。怒ってる。
「嫌だ」
ここで行ってしまったら、何も解決しない。
私の戯言で終わってしまう。
諦めたように新聞から顔をあげるお父さん。
話す気になってくれたのかな――、そう思った私が間違っていたのかもしれない。