家の前。
大きく息を吸い込む。
大丈夫。頑張れる。

変える。この家を。
お姉ちゃんや里玖がいた頃みたいに。

ガレージに視線をやる。
――お母さんも、お父さんも帰ってきてる。

「舛里……」
優の不安げな声が聞こえる。
「大丈夫」
大丈夫だよ。私は笑顔で応えてみせる。
「花月、がんばれよ」
芦田の差し出した拳に私の拳をコツンとぶつける。
「ありがと。じゃあ、また明日」

私は2人にそう残すと、重たい玄関の扉を開いた。

「……ただいま」
「……」
何も声は返ってこない。
静まり返った家の中。
これが最近いつもの日常。
食卓の上にはラップがかけられた夕食が置かれていた。

――この生活を、変える。