――余計な事を話してしまった。
何も知らない芦田に。
何やってんだろ。
どうせ、心の中でバカにしてるよ。
あーあ。

『花月ってどんなやつ?!』

でも、単刀直入にあーやって聞かれるのは驚いたけど、嫌じゃなかった。
芦田って変な奴…。

「芦田」
机で寝かけていた芦田に声をかけた。
「なにー?」
眠たそうな声だ。
「さっき話したこと、忘れて。」
用事はそれだけ。大して深い関わりを持ってないのに、あーゆー意味深なこと言ってしまうと、後から色々聞かれてくるのが目に見える。
「なんで?」
不思議そうな顔で私を見てくる。眠気は私の一言で覚めたみたいだ。
これからずっと、何があるんだろう、とかそういう目で見られたくない。
普通の友達として、なにも無かったかのように接してくれる方が楽だから。
「私は、いつも明るいから。そんな風に思われたくない。喋りすぎた」
「だから、忘れろって?」
「うん」
「マイナスな花月も、明るい花月も、全部花月自身だろ?」
芦田の口からそんな言葉が出ると思わなかった。
何いい事言ってんの? それ、本心?

「花月?」
「…全部、噓だ。」
その時、都合の言いように言ってるだけ。
信じない。そんな言葉信じない。騙されないよ。
「噓?」
「人のいう事なんて信じない。」
信じたって、いつも同じだ。
「え?」
「……あ、なんでもないっ! 芦田といると変なこと口走るから嫌!」
だめだ。芦田といると本音が出てくる。
忘れるように言いに行ったのに、これじゃあ逆に忘れるどころか超覚えるよ!
だめだ……。
「おいっ!!」
ぐいっと腕を引かれる。
「今の俺の言葉は本心だぞ?!」
真剣な顔で伝えてくる……。
「……分かったよ。」
もうこの話はやめよう。これ以上はもういいよ。
話しかけたのは私だけど、もう帰りたい。この場から去りたい。
「どうせ半信半疑?」
芦田の言葉に返す言葉もない。見つからない。図星だから。
芦田はむかつく。芦田といると今まで黙ってたものを吐いてしまう。
なんで? わかんない。

「なあ、花月」
「今度は何?」

「俺、もっと花月のこと知りたい。友達になってくれないか?」
芦田は少し笑ってそう言った。