ガチャン。
ドアを開く音が響く。
本来屋上は立ち入り禁止だ。
ドアの鍵は錆びているのか少し茶色くなっていた。

「屋上とか初めてだわー」
今まで立ち入り禁止だから入れなかったけど、本当は卒業する前に1度は行ってみたかった。
「私は、初めてじゃないかな」
「あ……」
笑いながら告げる花月。
知ってしまっている俺に返す言葉がない。
ここに来たのはその話をするためか。

「その様子だと、知ってるのかな?」
別に怒るそぶりもない。
驚いた様子もない。
「ごめん。私が喋った」
戸山が申し訳なさそうに謝る。
「いいよ。その方が、話が早いし」
別に責めもしない花月。
むしろ好都合、という雰囲気だ。

「じゃあ芦田。後は、舛里の話を聞いてあげて」
そう言うと、戸山はポケットからミュージックプレーヤーを取り出し、俺たちとは反対の方向に行った。

「えっとさ、花月の姉弟ってさ……」
俺が話を切り出す。
知りたい。
「うん。そのことを話すつもり」
顔は曇っていない。
どこか清々しそうだった。
「あぁ。話せる限りでいいから」
無理して、清々しくしているのかもしれない。
そう思って俺が花月に言う。
でもそれも無用だった用だ。
「大丈夫、全部はなすよ」
花月は微笑む。

そしてポツポツと話し始めた。