君がくれた世界

「私、小学校3年生の時いじめられてたんだ」
「え?」
唐突な告白に戸惑いを隠しきれない。
「だけど、舛里がそのいじめっ子を言い負かしたの。それから私へのいじめはなくなった」
辛い思い出のはずなのにその顔は悲しそうな雰囲気はなかった。
今となっては花月との出会いの思い出なのかもしれない。
「言い負かしたのか。花月らしいな」
俺はいじめっ子に突っかかっている花月を想像し、フッと笑う。
「そうでしょ? 私、本当に嬉しかったんだ。それまでは、舛里と関わりがなかったんだけど、それからは、舛里がいろいろ話しかけてくれてさ」
「そっか」
戸山にとって花月は恩人なんだな。
昔から仲がよかったわけじゃなかったんだ。
「それで、舛里に何かあったら、今度は私が守る、って」
目線を足元へ落とす。

「……でも、守れなかった。舛里が再び自殺しようとしてたことに、私は気づけなかった」
助けてくれたのに、助けてあげられなかった。そう呟いた。
「もう、終わったことだろ。仕方ない」
「……ごめん。ありがと」
微笑む戸山。
花月も戸山も苦しんでたんだな。

その後は、花月との過去の思い出を聞いていた。
先生と口論した話や、男子と喧嘩した話。
花月がまだ本当に明るかった頃の話。