「もう、そんなことしないよな……?」
そんなことしないで欲しい。
もっと楽しいことがあるはずなんだ。
花月ならもっと楽しくすることだってできるはずだ……。
「わかんないよ……」
戸山は立ち止まる。
「させたくなくても、私にはどうにもできないんだよ……」
俺は見た。戸山の肩が震えているのを。
泣いているんだ……。

「戸山は泣くことない! 戸山は戸山なりに頑張ったんだろ?」
手紙にも書いていた。
きっと戸山がいなかったら、花月はもういなかったかもしれない。

「それでも舛里は死にたいと思った」
ポロポロと涙をこぼす戸山。
「今回の元凶は俺だろ? あんま自分を責めんなよ」
今回はお互いの思い込みが招いた結果だ。
「お願い……」
戸山の目にもう涙はなかった。
真剣な声で続ける。
「舛里の支えになって」
そして微笑む。

「は? 戸山だって、十分な支えだろ??」
力なく首を横にする戸山。
「私よりも大きな支えになって。舛里を……、お願い。助けてあげて」
私じゃ無理なの、そう言った。
「……分かった。俺に出来ることがあるのなら」
「……ありがとう」
戸山は再び歩き始めた。

「外山は花月が大好きなんだな」
俺も戸山の後ろを歩く。
「うん。助けてもらったんだ」
「助けてもらった?」
懐かしそうに空を見上げる戸山。
1番星が輝いていた。