――帰り道、俺は戸山と花月の話をした。

「花月って、あんなに自分を追い込んでいたのか……?」
「うん。そうなっちゃったんだ……」
戸山の表情は懐かしそうだ。
俺の知らない昔の花月を思い出しているのだろうか?
「“なった”……?」
花月も言ってたもんな。
昔は違うかったって。

「昔はホントに明るいだけの舛里だった。暗いのなんて全くなかった」
昔の花月は、オモテウラ関係なくずっと笑っていたんだろう。
「じゃあ、どうして……? 姉弟がいなくなったから……?」

俺は一人っ子だから分からない。
お姉ちゃんや弟を亡くすと人間不信になってしまうのだろうか……?
「それは、舛里から聞いた方がいいんじゃないかな?」

「そっか、だよな……。でも、その話ってお姉さん達に関係ある話だよな……? もし、そうなら……」
話すのは苦痛じゃないのか……?

「舛里、言ってたよね。話すこと苦痛じゃない。芦田の負担になってないか心配って」
俺の心を見透かしているかのようにそう言った。

「舛里の言葉、信じてみて」
微笑んでいる戸山の顔を見ると、本当に花月が大事で大好きなんだなと思う。
「そうだな。そうする」
俺も笑顔で返す。
「そうすれば、芦田の恋心もいつかは……」
戸山は楽しそうだ。
……いやいやいや?! なんで?!
「ちょっ、なんで、知って……?!」
「見てたら分かりますけど」
完全にパニックの俺を見て楽しむ戸山。


「これ以上、自殺未遂なんて見たくないね」
一通り俺をからかい終えた戸山がふともらした。

「“これ以上”……?」
ってことは過去にも……?
「……あ、うん。そう」
口を滑らせてしまった。そういう雰囲気だった。


「知らないと思うけど、舛里の自殺未遂は2回目だよ――」