その後しばらく、花月と話をすることはなかった。
話しかけようとした。
無理だった。
本心は俺の話で心の底から笑って欲しい。
でも、無理で。
表情は、笑うどころか曇るばかりで。
そんなカオさせたくないのに。

――次の日、花月は学校を休んだ。

教室では、「また入院したんじゃないか」って、面白半分に盛り上がっていた。

「ねえ」
「……? 外山??」
戸山から声をかけられるとは思わなかった。
「話、あるんだけど」
真剣な声。花月のことだろう。
「いいけど……」

そう言うと、外山は俺を廊下に連れ出した。

「何?」
「昨日さ、舛里に何か言った?」
「え……?」
昨日なんてあの朝以降話をしていない。
「ほんとに何か心当たることない?」

心当たりがあることいえば、昨日俺が「控える」って言った事ぐらいしか…。
俺がそのことを告げると、外山は大声で言った。

「バッカじゃないの?!」
なんでいきなり罵声をあびなければならないんだ。
「それ、芦田の勘違いだから」
そう言うと戸山はうつむいた。
「え?」
どういうことだ?
俺、何か勘違いしてたか?
「もしかして、舛里があの話すると傷つくとか思ってた?」
あの話……、過去の話のことか。
「……うん」

「芦田が最初、舛里と話したとき、なんて言ったか覚えてる?」
俺に問いかける戸山の顔は穏やかだった。

“俺と友達になって”
“花月のこと知りたい”

期間限定の友達どまりにならないよう。
“気持ちが長続きさせるようにするよ”

「うん」
忘れるわけがない。
花月との会話。

「……舛里、喜んでたよ……?」
戸山が微笑む。
「え……?」
喜んでた?
最初、長続きさせるように言ったとき、花月は俺を試すかのように『期待してる』と言った。
馬鹿にされてると思っていた。

「私も一昨日の帰りに聞いたんだけどね――」
そう言ってその日の出来事を俺に聞かせてくれた。