「――おはよー!」
姉弟の死を知った次の日の朝、オモテの花月が俺にあいさつをする。

「うーっす」
だから俺もそれらしく返す。

「あの、昨日の事なんだけど……」
花月の表情が曇る。……これ以上、困らせたくない。

「なんか、マジでごめんな。俺と話すると、そういう話ばっかだから、話すの控えるわ。花月だってキツイだろ?」
そう言って花月の横を通り過ぎる俺。
自分で言って、キツかった。

あんなの本心じゃない。
控えたくない。
でも、……うん。
――君の為。

「……あ」

通り過ぎるとき、花月は表情を曇らせたままの顔で何かを言おうとしていた。
だけど、聞こえないフリをした。

ホントなら、そのまま話がしたかった。
でも今、話をしたら、きっと花月は昨日のことを忘れてと言うんだろう。
“昨日のこと”
その言葉を発するだけで、過去の記憶がよみがえるだろう。
きっと悲しむだろう。