『お姉ちゃんが高2、里玖が小5、――生きてたらね』

君の顔は穏やかで、でもすぐに泣いてしまいそうで。

「――え……?」
上手く言葉が出てこない。
「え、って。そのまんま。生きていたら、確かにお姉ちゃんは高校2年生で、里玖は小学校5年生だった。」

――それって、つまり……。
“今は居ない”って事か――?

「り、両親は……?」
もし、両親もいなかったら、花月は一人――?
「お父さんもお母さんもいるよ」
写真を見つめたまま答える。
「そっか」
よかった。一人じゃなかったんだ。

「舛里、もう帰ろう……?」
外山が花月に言う。
確かにこの話は花月とって決していいものではないだろう。
花月は無言で頷いて外山について行った。

「花月、ごめん……」
謝ってどうにかなるわけではない。
もう、聞いてしまった。

「別に、いいんだよ。芦田はなにも謝ることはないよ。じゃあね」
そう言う花月はまたオモテの顔だった。

俺は、知ってよかったのだろうか ?

花月のことを知りたかった。
俺の勝手な気持ちで、花月に迷惑をかけている。

今の話だって、最初は俺の“知りたい”って気持ちだけで踏み込んだことだ。
結果、花月にとっていい物ではなかった。
俺が花月のことを聞いていく度に、話している花月を傷つけているんじゃないのか ?

――だったら俺は、花月に関わらない方がいいんじゃないのか?

花月のことは知りたい。
けれどそれは、花月にとっていいものではない。

気付いてしまった。
俺は花月が好き。
大事。
なら、傷つけたくない。