俺は芦田光。
あ、“こう”じゃなくて“ひかる”な。

2学期始業式、今日は6月辺りから入院していた、このクラスの副委員長こと花月舛里が復帰してきた。
なんで、入院していたんだっけ? まぁ、細かいことは忘れた。
「改めて自己紹介します。帰宅部の花月舛里ですっ! 忘れてる人とかもいると思うけど、よろしくお願いしますっ!」
ペコリと頭をさげて、花月は満面の笑顔で笑った。
その様子をみて俺は思う。
花月の事忘れるやつとかいんのか? コイツ、何もしなくてもスッゲー目立つじゃん。声、でかいし。

花月のことは俺が1年生の時から知っていた。クラスは同じではなかったけど、帰宅部のくせに運動神経がすごいとか、塾とか通ってないのに勉強が常に上位とか、集会などの集まりの場で声がでかいとか、いろいろ目立っている奴だった。
それにいつでも笑って、友達に囲まれている。
そういうやつだった。

「舛里――っ!!」
「優、久しぶり。いつもお見舞いありがとね!」
「よかった―、元気になって!」
そんなやり取りを花月と交わしているのは、確か花月と仲がいい戸山優か?
それにしても、花月の声はでかい。話してる内容、花月の分は全部聞き取れるぐらいだ。
でも、あれぐらい明るいと一緒にいる奴らは楽しいだろうな。
花月の場合悩みとかマジで無さそう。

「――お? 光ってば花月に惚れたか?」
俺がぼんやりと花月を眺めていると慶が声をかけてきた。
こいつ、なんでもすぐ恋愛に発展させようとするからな……。
「んな訳あるか。今日復帰だぞ?」
俺は視線を花月から離した。
「でーすーよーねー」
おもしろくねぇな~、と慶が俺の肩を叩いてきた。
「てか、声でかいし…」
まぁ、そういうのがいいとかいう奴もいるんだろうけどな。
「うんうん。でも、顔はよくないか?」
ぐいっと顔を近づけてくる。
「そうか?」
「可愛い系じゃなくて、綺麗だよな。」
俺は再び花月のほうを見た。
「んー、まー、言われてみれば。」
確かに声さえ小さかったら、もっとモテるかも知れない。
「だろだろ!」
「オマエが惚れてるんじゃねーの?」
あんまりにも花月の話題をひっぱるので逆に聞いてみた。
「ばっか言えよ。俺の本命は他校だぜ?」
「あっそ。」
「光くんつめたーい」