【完結】セ・ン・セ・イ

言うほど財布の中身が寂しいわけでもないが、一体このお嬢サマは何を奢らせるつもりか、と身構えた俺を拍子抜けさせたことに、彼女の要求は実に予想外なモノだった。


「……え、何? もう1回言って」

と、思わず聞き返してしまったほどに。


だから、とちょっと怒ったような顔をして、朱莉は繰り返す。

「ハンバーガー!」

……ハンバーガーって、アレだよな。

ハンバーグ、の聞き間違いじゃないよな。

あの、パンの間に肉とかトマトとかチーズとか挟まってる、手づかみで大口開けて噛みつく高カロリーなジャンクフードのことだよな。


「マジで?」

「……何なのよっ!」

ツンと尖らせた口、膨れた頬、逸らせた目線は不機嫌と見せかけての、

「何照れてんの」

「ばっ……!」

照れ隠し。

図星を指されて顔を赤くしたのは金持ちのお嬢なんかじゃなくて、ただの女子高生だ。


素の彼女は日傘なんか使わないし、高級フランス料理よりもジャンクフードがお好みらしい。

そう言えばコイツ、夏祭りではたこ焼きを旨そうに頬張っていたし、バーベキューでも串に刺さったままの肉や野菜に食いついていた。


朱莉の素顔を理解しているつもりでいたけど、なまじ日傘や足音を立てない歩き方や『お母様』なんつう言葉遣いを目にしてきたがために、無意識にそっちの印象に引っ張られている部分がある。

これは、改めなければ。