翌、9月1日。

本来なら大抵の高校で始業式が執り行われるこの日程が今年は日曜日にあたったため、この日が多くの高校生にとって夏休み最終日となる。

これは、瀬戸朱莉が通う私立女子高についても同じだった。


大学の夏季休暇は9月中旬まで続くので、俺はと言えばまだ連休の真っただ中。

臨時で入れた塾講師のバイトも8月中に終了していて、家庭教師の職も無期限休暇をいただいている今、普段であれば持て余すほどの時間を考えることに消費できる。


どうにか、彼女を。


しかしてその連絡は、思考を一刀両断するかのように唐突に入った。

『あ、進藤先生ですか。お休みのところ、失礼致します』

無期限休暇は、正式に雇用契約解除に。

その通達は瀬戸朱莉でも彼女の母親でも父親でもなく、仲介役となっている家庭教師の登録事務所によって、実に事務的に行われた。


そして俺は、彼女の『先生』ではなくなった。


関係は、あちらから断たれた。

生徒ですらなくなった彼女に、これ以上踏み込んで関わっていく義務は、もう俺にはない。

俺を介して朱莉と知り合った木嶋にしてもだ。


これが引き際、であった。


下手を打てば事態を悪化させかねない手に余る問題から目を逸らし逃げることを、見なかったことにして忘れることを、俺は許されたのだ。


恐らく、瀬戸朱莉本人の意思によって。