【完結】セ・ン・セ・イ

「まーまー、合宿にも行かないで毎日家庭教師で稼いでるんだから、ちょっとは貯めこんでんだろ!」

人の金を勝手に使って買ったケーキを頬張りながら、小さいことは気にするなと言わんばかりに裕也は言ってのける。

生憎毎日と言っても時間にしたら2時間だ、決してそう言われるほど儲かってるわけではないのに。


ポテトを摘まみながら反論しようと開きかけた口はだが、

「合宿にも行かないで」

裕也の言葉をそのまま反芻した朱莉の声によって動きを封じられた。

……なんだ?


「センセー……」

瀬戸朱莉は、真顔でじっと俺を見つめてくる。

なんだか様子が、おかしい。

「どうし――」

その真剣な視線に真正面からぶつかりにいった、瞬間。


「夏休みなのに何にも予定がない暇人かと思ってたら、予定を蹴って来てくれてたんだ」


裕也と木嶋はその言葉にほぼ同時に吹き出した(多分笑ってるのは前半のところだ)が、俺はなんとも反応しがたい。


元々サークルの合宿は飲みメイン(1年生は吐くまで飲まされるらしい)とのことで、乗り気じゃなかったのだ。

なんだか今の朱莉の言い方だと彼女のためにプライベートを犠牲にしたみたいにも聞こえるが、そういうつもりは――。


「そんなにお金に困ってたの?」

「おいッ!」


――田澤少年の豪快な笑い声に裕也と木嶋が乗っかり、最早学食中の視線から逃れるためには、さっさと食事を終えてここを出るしかなさそうだった。