【完結】セ・ン・セ・イ

――朱莉も、何だ?

自分と重ねあわせて、何問題をすり替えようとしている?


どう考えたって、素の俺は【こっち】だ。

教師モードは確かに少し背伸びをしているし、『聖職者』を意識するあまり普段の俺よりも真面目だった。

だが素は【こっち】だ。


【こっち】の俺だって万が一にも夢が教師じゃなかったら、きっと未成年だからとかカタいこと言わずに飲み会にもばんばん参加してるだろうし、もしかしたら裕也みたいに女子高生相手にもうはうは言ってるかも知れない。

教師と言う目標が枷になって自制が働くだけで。


瀬戸朱莉の素は、【どれ】だ?

どれも本物で、それでも最も瀬戸朱莉の本質に近いモノ。

本人ですら見失っているかも知れないそれは、きっと、恐らく、――いやそれは、俺の希望的観測にすぎないけれど。


そして問題は、何かが……彼女の枷になってるってことだ。
学校でも、家でも。

それがプラスの要素ならまだいい。

俺自身が夢という枷を外す気がさらさらないように、彼女にとってもそれは悪いモノではないはず。

だけど――


「うわ、ホントに他人と乗るんだね」

「えっ?」

思考の底なし沼にはまって沈みかけていたところを、一声で現実に戻される。

見れば、間に5人ほど挟んで前に並んでいた木嶋たちが、前後の他人とともにタクシーに乗り込むところだ。


「夏休みなのに大学へ行く人、結構いるのね」

「ああ……、補講とかサークルとか研究とか、色々な」

まとまらない考えを頭の隅に追いやって、ソツなく会話を紡いだ。