【完結】セ・ン・セ・イ

「何それ、こわッ」

朱莉の感想ももっともで、新入生の女子なんかは最初は絶対に1人で乗らないらしい。

実際にはタクシーの運ちゃんにとっても当たり前となっているこの仕組み、悪知恵の働く部外者が女の子1人囲んでどこかに連れ去ろうとしても無理な話。

素性の知れた同じ大学に通う学生同士だ(ごく稀に教授陣との相乗りもあるらしいが)、怖いことなど起きようもないのだが。


「アカリちゃんうちの大学志望なら、相乗り体験した方がいいんじゃない?」

木嶋の提案で、4人で1台に乗れば済むところをわざわざ2組に別れて並んだ。


木嶋・田澤少年組と離れたところで、朱莉が小さく俺のシャツの裾を引っ張る。

「ん――、どうした?」

「木嶋さ……先生って、センセーの、彼女?」

え、嘘そう見えたの?

なんだそれ、なんか色々すげぇショックなんだけど。


「なんだ、違うのか」

「ちょっと待て、まだ答えて」

「顔に出てるよ」

――クソ、生徒に上手いこと遊ばれて、絶句している場合か。


「キミね、2人になった途端、よくしゃべるね」

「……猫被り」

「……クソ」

あ、思わず素が出た。

でももうなんだか、コイツ相手には、下手に教師ぶるよりもその方がいいような気がしてきた。

「あのな、俺のは猫じゃなくて、オン・オフっつーの。そんなに先生モードが嫌なら、もうずっとオフで行くぞ」


――瀬戸朱莉の素の笑顔を、この時俺は久しぶりに見た気がする。