【完結】セ・ン・セ・イ

何とか冷静を装って、何事もなかったことにして大学へ向かった。

坂の上にある大学まで、歩けば25分(帰りは15分)、学生は行きを『登山』、帰りを『下山』と呼んでいる。

日焼け云々は別にしても、この暑さでの登山は俺としても遠慮したい。


交通手段は他にバスとタクシーがあり、バスの時間までは少々あったので俺たちはタクシーを選択した。

いずれこの大学に通うことになるなら、この駅特有の暗黙のルールも知っておいたほうが良い。


「はぁ? 通学にタクシー!?」

ゼータク! と田澤少年が驚きの声を上げた。

そりゃそうだろう、俺も――多分新入生のほとんどが、4月に同じ反応をしてるんだから。


暗黙の内に知らない人間との相乗りが自動的に決まる、初心者には恐ろしいこの駅特有のシステム。

まず初めてタクシーの列に並ぶ時は知り合いを1人は巻き込んでおくのが安心だ。

講義の始まる時間に合わせて駅まで来たなら、タクシー待ちの人間の9割は大学行きの学生とみなして良い。

先頭から順に4人ずつ、相手を知っていようがいまいが関係なく問答無用で(しかも互いに声を掛け合ったり確認することすらなく)タクシーに乗り込む。

誰が行先を言うでもなく勝手に走り出したタクシーは自動的に大学で止まるので、助手席に乗ったヤツがまとめて支払い、後部座席の3人は割り勘ぴったりの小銭(余程のことがない限り210円)を即座に渡すのが礼儀だ。