【完結】セ・ン・セ・イ

「か、わ……ッ! センセ、それセクハラだから!」

……ですよねー、そうなりますよね。

ギリギリまで抑えたのに、誰が言わせたと思ってるんだ畜生。


「はいはい悪かったね。さっさと行くよほら」

気を取り直したのかまたツンと前を向いて歩く彼女が差す日傘は、垂直に天に向かって伸びていた。

大人なのか子供なのか、素直なのかひねくれてるのか、どこまでが演技でどこからが素なのか。

まったくこの生徒の本質は計り知れない。


いつの間にか俺よりも早足になった彼女に置いて行かれないように、俺もせかせかと足を動かす。

高く上った太陽が、ジリジリとアスファルトを照らしていた。


「ああそうだ」

木嶋たちのことを話していなかった、と不意に気付き、道中で説明する。

「センセーの……友達?」

そう言ったきり朱莉の反応は薄くて、ちゃんと聞いているんだかどうだかも良く分からなかった。


あまりしゃべらなくなった瀬戸朱莉の代わりに、セミの合唱がどこまでも付いて回る。

暑いな――、日傘は正解かもしれない。

ちょっと目立つけど。


大学の最寄駅までは4駅、時間にして15分足らずだ。

だけどその間、朱莉は黙って俯いて、綺麗にたたんだ日傘の先でただ車両の床を突いていた。