【完結】セ・ン・セ・イ

ほんのり頬が赤らんだのはチークじゃなくて、俺に指摘されたからだ。

瀬戸朱莉のこういう反応は、新鮮。

「べっ別に……! すすっぴんだと、ひ、日焼けが……ッ」

……噛みまくってるし。

「あーいや、そんな慌てなくても。いいんじゃない、ナチュラルメイク」

喉元まで出かけた『可愛いよ』という言葉はさすがに飲み込んだ。

言い慣れた言葉でもないのにすっと出てきそうになったのはそれが素直な本音だからで、でもだからと言って、軽率に生徒に対して言っていい言葉じゃない。


「こ……」

「はい?」

立ち止まった朱莉の声が、上手く聞き取れなかった。

振り向けば、萎れるように前に傾いた日傘に隠れて顔も見えない。

「朱莉ちゃん? なんて?」

「こども……っぽい?」


危うく吹き出しそうになった。

大学構内を歩き回るのに、一生懸命大人びた服装を選んだんだろう。

化粧までして念入りに準備したのに、俺が言った『ナチュラルメイク』の一言をそう捉えたのか。


「ちょ、センセー! 何笑って……!」

駄目だ、堪え切れないかもしれない。

「大丈夫、いつもより大人っぽい。大学生に混じっても分からない。服もメイクも似合ってるし――」


ほら、やっぱり。

真面目に宥めてやるつもりだったのに、どんどん赤くなって目を泳がせる瀬戸朱莉は。

「……可愛い、んじゃない?」

――ってほら、結局言っちまった、馬鹿。