【完結】セ・ン・セ・イ

「おはようございます、進藤先生」

チャイムを鳴らせば大抵朱莉本人が出てくるのだが、今日は珍しく母親が現れた。

「あ、おはようございます。朱莉さんは……」

「すぐに参ります。今日は大学を案内していただけるそうで、ご挨拶をと思いまして」


朱莉の母親は柔和な微笑みで「よろしくお願いします」と言うと、中で待つよう勧めてくる。

短時間ならここで待つと断りを入れてから、夕方まで連れまわすのだから予定を話しておいた方が良いかと思い立ち、木嶋とその生徒が同行することや1日の予定を順に話していく。


講義の聴講について「是非に」と食いついてきたが、そこは時間や生徒たちの意思との兼ね合いで決める予定だとはっきり伝えた。

何せ大学の敷地が広すぎて、歩きまわっている内に時間切れとかダウンとかいう可能性だってあるのだ。


「帰りは夕方になりますが、責任を持って送り届けますので」

「まあ、わざわざどうも。お手数をおかけします」

朱莉の母親は丁寧に頭を下げたが、俺が聴講についてすんなりYESと言わなかったことで少しばかり気を悪くしたのは何となく伝わってきた。

この人はきっと、NOと言われることに慣れていないのだろう。


「おはようございます、先生! お待たせしてすみません」

と、会話の途切れたちょうど良いタイミングで朱莉が現れた。