【完結】セ・ン・セ・イ

木嶋はどうやらサークル活動だけではなく、午前中の大学構内の案内から同行するつもりらしい。

察するに、忙しなく動く指が操作するメールの相手は彼女の生徒だ。

本文を作成し送信してはアイスを食べ、レスポンス良く返信が来てはまた本文を打ち――を二、三度繰り返した後、

「うん、よしっ!」

ようやく彼女は顔を上げて微笑んだ。


「明日、10時半に駅集合ってことで生徒とアポ取れましたー! そっちはどういう予定?」

その時には綺麗にアイスがなくなっていて、その手際の良さに俺はほとほと感心してしまった。

「10時半とはまた中途半端な」

「だって早起きしたくないってアイツが言うんだもん、これでも大分粘って早めたのよ」


こっちは元々10時に瀬戸朱莉の家まで迎えに行く予定だった。

外で待ち合わせたらばっくれられる可能性もあるから、自宅で確保という――我ながら頼りない計画。

それから電車に乗って、大学の最寄駅には10時半だとギリギリ着くか着かないか、と言ったところか……いや、怪しい。

多分、間に合わない。


そう説明すると、木嶋は生徒が寝坊して遅刻する可能性を危惧しているようで、それくらいがちょうどいいと言う。


何にせよ彼女のおかげで法学部の校舎も案内出来ることになった。

俺たちが話し込んでいる間大学の掲示板にアクセスしていたらしい裕也からの情報で、人気の授業の補講が明日自由に聴講できるというのも分かった。

これは思いの外実のある体験入学になりそうだ。