ペンを置くと、勢い良く部屋を飛び出した。

「サカキ!」
目の前を歩いている執事を呼び止める。

サカキはサラが生まれる前からこの家に勤めている男である。

歳は三十を過ぎたが、彼の立ち振る舞いと精悍な顔からは未だに青年を思わせるものがある。

そんなサカキはサラのほうを向くと、笑みを浮かべた。

「お嬢様。いかがなさいました?」
「これをリサに届けてほしいの」

そう言って水色の封筒を渡した。

「早いですね」
「すぐに返ってきたほうが嬉しいでしょう?」

「ええ。しかし、いつ返事が来るのかドキドキしながら待つのが手紙の良いところでもあるのですよ」

いいながら燕尾の内ポケットに入れた。

「・・・そんなものなの?」

今さっき手紙が入れられたところを見つめた。

「じゃあ、明日の朝に届けてちょうだい」
「かしこまりました」

サカキは笑顔で返した。