サラは自室の戸を開けた。
飛び出して行ったきりだった為、部屋は荒れていた。

「・・・どうぞ」

その状態を隠そうともせずサカキを部屋に通した。

「・・・失礼します」

律儀に一礼して入って来た。
サカキは顔を上げると、部屋の惨状に一瞬、眉を寄せた。

「あぁ。今片付けるから、その辺で待って」

そう言うと、サラはバイオリンを机の上に戻し、手紙を木箱の中に戻した。

「どうぞ」

椅子を用意したが、サカキは断った。
そして深く息を吐くと、サラの瞳をじっと見つめた。


「旦那様が寝たきりになってすぐのことでした」

サカキは静かに話し始めた。