箱を開けると、やはり中にはアップルパイが入っていた。 「焼いたりんごはいいにおいがしないとおっしゃっていましたね」 「そうよ」 声を落として、ねぇサカキと問いかける。 「わたしはいつ、モリサキ邸に行ったかしら」 「・・・・・」 「ねぇ」 「・・・・・・」 「いつだったかしら」 見上げると、サカキもこちらを見下ろした。 サカキは静かに微笑んでいた。 一瞬、怖いと思ったからすぐに目を逸らした。 サカキは答えなかった。