「なぁ、そういえば蒼葉」


「何?」




蒼葉と呼ばれた少年は呼ばれた方向へと視線を向ける。
そして次の言葉を聞いた瞬間、


「今日もピアノ、聴きたいな」



柔らかな微笑みを見せた。




「——おう、」




軽い足取りで音楽室へ向かう。
何度も何度も繰り返し練習した、楽譜に描かれた音符の羅列を頭に浮かべながら。