最初で最後のセレナーデ




——翌日の午前八時。
桜坂蒼葉は遅刻寸前の時刻に目覚めた。
間に合わないといけない時刻は八時半。
蒼葉が起きた時刻は八時。
いつも通りの電車に乗り、いつも通りの速さで歩いて登校にかかる時間は四十分。
どう考えても走らなければ間に合わない。



「遅刻遅刻遅刻!!やっべえ!!!」



高校一年生の五月に仲良くなってから、つまり既に一年間毎日一緒に登校している灰里に、寝坊したと言う旨を伝えるメールを簡潔に送る。

いつも灰里と蒼葉が待ち合わせする時間はお互いの家から十五分程かかる駅。
八時にメールを送り学校に向かえば、灰里はぎりぎり遅刻せずに済むだろう。