一方、享は少し難しい顔をして眉を寄せている。
何かを考えているようだ。
「たしか紅にいたよね。暴姫って呼ばれる女」
「それがどーかしたのかよ」
「紅の総長“だった”。けど、幹部の人たちくらいしか暴姫を見たことない」
「……滅多に姿を現さない」
ぼそっと呟く声に、
「何で享まで知ってんだ」
陽は少し拗ねた様子。
自分だけが知らなかったということが悔しかったらしい。
「陽、今の俺の話聞いてた?」
「テメェ俺を馬鹿にしてんのか?」
「俺の話を聞いてたら引っ掛かるとこがあるはずなんだけど。」
「ねぇよ、引っ掛かるとこなんて」