「……おい」


「なに?」



わかっているくせに、わざと何のこと?という顔をして享の言葉に聞き返す。



「話せばいいんでしょ」

享の返事がないことに痺れをきらして話し出す湊を2人は見た。



「あぁ」


「ねぇ、知ってる?」


「何がだよ。早く言え、早く!焦らしてんじゃねぇ」


「紅(くれない)の話でもしようかな?」

こてん、と首を傾けたことによって甘そうなミルクティー色の髪が目にかかる。




「話し逸らすんじゃねぇよ!“紅”ってあのレディースだろ?今んなこと聞いてねぇ」



目にかかった髪を鬱陶しそうに払った湊と、

本題になかなか入ろうとしないことへ苛立ちを覚える陽は言い合う。


……というよりは、陽が一方的に苛々をぶつけているだけだか。