佐伯さん




「着いたって。帰ろー」



さっきの暗い雰囲気を取り払い2人で教室を出て玄関に行く。



「あれ、高橋くんだよね?」


咲希の言葉に目を向けると、傘をささずに雨に打たれる高橋くんがそこにいて。




雨に濡れた髪はペチャンコになっていた。

「傘なかったんだ…残念だったね」



横で話す咲希の声が耳に入ってこない。



あの姿…………どこかで見たことがある。

“おい、何やってんだ”


あの姿をあたしは知っている。


“傘くらいさせ。濡れてんぞ”



あの時の男の声が頭の中でリピートした。