痛い~痛すぎる!
せっかく滑らず未然に防げたってのに角で小指をおもいっきりぶつけてしまった。痛い…地味に痛いんじゃなくて、派手に痛い。
「応急処置でもしましょうか~?」
「…っ…お願いしたいっ!」
「じゃあドア開けますねえ~っと」
その言葉が聞こえたと同時にドアノブが握られたのがわかった。
「そ、それは駄目だ。まだ服を着ていない!一度リビングへ戻っていただきたい」
あたしの声が聞こえたのか、ドアノブから手を離したらしい蓮は「りょーかいで~す」とだけ言い、リビングに戻って行った。
あたしはノロノロした蓮の喋り方に少し苛つきを覚えた。こんなに痛いってのに、余裕そうな声出しやがって!
毎回語尾を伸ばしてるわけじゃないから普段はそこまで苛つかないが…
いやいや、たまには苛つくけどね、でもこういう時に限って何回も語尾を伸ばされると苛々するな。
ゆっくりと小指から手を離し、バスタオルで体を拭いて部屋着を着た。
あぁ。あたしの小指が赤くなりかけてる…
まだじんわりと痛みが残る小指を庇うようにして歩きながら、リビングへ入る。
「大丈夫だったのか?」
「小指が可哀想だ」
「答えになってねえよ」
心配してくれる蓮はあたしを見て
綺麗に整えられた黒い髪を揺らしながらクスクス笑った。

